(司会者)
伊藤詩織さんの裁判報告会を開催いたします。
現在、詩織さんは、性暴力被害の事実認定と、損害賠償を求める民事訴訟で、山口(敬之)氏とたたかっています。

2017年9月に訴えを提起し、原則非公開の弁論準備手続きにより、争点の整理が重ねられてきました。
その後、2019年7月8日の第2回弁論記述で、原告被告双方の本人尋問が実施され、本日、第3回の口頭弁論期日を迎え結審しました。判決の言い渡しは、12月18日午前10時30分~です。

本日の報告集会では、口頭弁論期日での最終準備書面の内容について、原告代理人弁護士の西廣(陽子)弁護士からご説明いただきます。その後、詩織さんから、現在の心境を語っていただきます。

加害者から非常識と言われた行動は、被害者として自分の身を守るために当然でした。

西廣陽子弁護士

西廣陽子弁護士

皆さん、こんにちは。詩織さんの代理人の西廣と申します。
本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。

本日、13時15分から最終の口頭弁論がありまして、結審してきました。その前に、最終準備書面を書いて、これまで主張してきたこと、相手の主張への反論なとをまとめて、裁判所に提出しました。
最終準備書面は、57ページもありますけれども、骨子は6つです。

1.詩織さんが尋問で話して明らかになった事実について
2.詩織さんの尋問での供述は信用できるものであるということ
3.詩織さんの供述が証拠に基づいているということ
4.被告の主張、供述は信用できないということ
5.不法行為に基づく損害賠償請求に関して、損害が発生している点について
6.加害者から謝罪広告を求められている反訴がありますので、それに対しての反論

ひとつひとつ説明すると時間がかかるのですが、一番述べたかったことは、本人尋問において、詩織さんの主張に矛盾がなかったということです。

内容は本(「Black Box」 伊藤詩織著)に書かれているのですが、彼女の主張というのは、最初から最後までずっと変わらなかった。

(被告側から)いろんな質問、非難がなされましたので、もし嘘をついているとしたら、一貫した主張なんてできないと思うんです。しかし、矛盾はありませんでした。詩織さんが真実を話していることの何よりの証明ではないかと感じています。
ひとつ例をご紹介します。

彼女は事件の2日後くらいに、被告に対して「無事にワシントンへ戻られましたか?」という内容のメールを送っています。これに対して、被告側は「通常、性暴力の加害者に対して、(被害者が)そういう内容のメールは送らないのでは?」という指摘がなされました。

「通常と違うのではないか?」という主張に対して、詩織さんは「通常とはどのような状態をいうのか?同じような振る舞いをしている被害者を私は何人も知っています。

(仕事を円滑に遂行するため、周囲に悟られないため、または加害者との関係が悪化すると自分に不利益が及ぶため)被害にあったことを隠す必要にせまられて、それまでと同じ振る舞いをせざるを得ないため、あのようなメールを送ったのです。私の常識とあなたの常識は異なっています」と述べています。

実際に、日本フェミニストカウンセリング学会から出されている「なぜ逃げられないのか?」という調査報告書では、被害直後に、たくさんの被害者が、加害者との人間関係が悪くなると、自分にとって大きな不利益が生じるために、加害者に対して迎合するような態度をとるのは珍しくないと述べられています。

これひとつを取っても、詩織さんが取ってきた行動というのは、なんらおかしい点はなく、自分の身を守るために当然であったと言えると思います。
これだけにとどまらず、「(被告側から被害にあっているのであれば)おかしいのではないか?」という趣旨の質問が何回かなされました。しかし、いずれも、詩織さんの主張や行動は、被害者として自分の身を守るために当然だったと、言えると思います。

他方で被告の主張は、裁判がはじまってから2年の間に、様々な箇所で変遷と言うんですけど、変わってきています。

例えば、詩織さんがホテルに着いて、タクシーから降りて、(加害者に)抱えられるようにして歩いている場面。

「かばんは詩織さんが持っていた」と当初、被告は主張していたのですが、ホテルから動画が公開されて以降、その主張はなされなくなりました。

動画では、被告本人が鞄を持っている姿が公開され、主張が維持できなくなったということだと思います。

その他にもたくさんありますので、主張書面では、様々おかしいと思った点を、指摘しました。

最後に損害ですけども、事件をきっかけに、(詩織さんは)PTSDを発症しています。いまだにいろんな場面に(事件を思い出させる)トリガー(=引き金)があり、パニックアタックを起こして心身ともに、とても辛い思いをされています。それに対する賠償を主張しました。

最後に、ひとつずつ事実を積みあげて、最終準備書面にまとめたのですが、書きあげるなかで、改めて、詩織さんが話してきていることには一貫性があり、矛盾したところが、ひとつもありませんでした。間違いなく真実を話しているという思いを、さらに強くしました。

詩織さんの主張が裁判所に認められることを信じて、この場を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
西廣陽子弁護士プロフィール
岐阜県恵那市生まれ
フェリス女学院大学文学部卒業
成蹊大学大学院法務研究科修了
弁護士秘書・パラリーガル勤務を経て、弁護士登録(東京弁護士会)
日比谷ステーション法律事務所
松尾千代田法律事務所

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